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谷川岳の洗礼。 ~一ノ倉沢衝立岩中央稜 ビバーク編~
2012年 09月 26日 *
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さて、昨日のつづきです。

終了点以降の行程はこう。
まず、現在立っている衝立尾根を辿り、烏帽子岩を右から巻きます。
その後現れる懸垂岩から懸垂下降で降り、一ノ倉尾根に合流。
ここからは南稜からのルートと共通なので、しっかりした踏み後を辿ればOKみたい。
一箇所、「5ルンゼの頭」というⅢ級程度の岩場がちょっといやらしいとのこと。

南稜~国境稜線抜けのルートは、M田さんとみれさんは何度か歩いています。
しかし、今回の中央稜はM田さんも初めてで、懸垂岩を降りた合流地点までは始めてのルート。
ガイドブックには30~40分で懸垂岩と書いてあるので、ちょっと時間は押してますが大丈夫でしょう。
靴を履き替え、一応コンテで歩き始めました。

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んん?なんか思ったより悪い?いや、間違いなく悪いぞ~!
確かに踏み後らしきものはあるんだけど、浮石だらけだし、微妙なブッシュを手がかりに攀じ登ったりと非常に気を使う。
オマケにこの頃にはガス漂いだし、草や岩が濡れてスリップしがち。
しばらくはそのままコンテで歩きましたが、とうとう岩壁にぶち当たってしまいました。
他に巻き道は見当たらず、やはりこの岩を越えなければならないみたいです。
当然M田さんがリードで突破を試みます。
ピンが少なく、ルートファインディングに苦労しているようですが、無事突破。
フォローで私たちも続きますが、最後のリッジを右から巻くところが高度感バリバリで怖い怖い・・・。
そこを越えた後も、悪い草付きの岩場が続き、ブッシュで取った微妙な支点で確保しながら進みます。
もう、M田さんが引いてるロープが無ければ、私たちにはどこがルートかもわかりません。

ようやく懸垂岩に到着。
すでに17時を回り、小雨も降り出しました。
垂直な壁を15mほど懸垂し、濡れてツルツル滑る笹薮の急斜面をトラバース、ようやく南稜からの踏み後に合流。
すでにあたりは暗くなってしまいました。
ヘッドランプを点け、再びコンテで歩き出します。
中央稜からの道よりはかなり良いですが、それでも登山道ではないのでかなり歩きづらい。
暗く、高度感を感じなかったのは幸いか?
夢中でヘッドランプの光を頼りに登っていくと・・・。
再び岩壁が行く手を阻みました。「5ルンゼの頭」です。

ここもM田さんが突破を試みますが・・・。
さすがに暗い上に雨で岩は濡れ、一歩間違えれば谷底に転落という状況ではキビしすぎます。
といういワケで、この岩壁前のテラスでビバーク決定。
M田さん以外は、全員ビバーク初体験。
そのうちツェルトでビバーク訓練してみようと思ってましたが、実戦が先になりました(汗)
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そうと決まれば、ありったけのウェアを着込み、非常食を食べてツェルトに包まります。
一応、ハーネスは装着したまま、フィックスしたロープにセルフビレイを取ります。
意外なことにビバークするということにそれほど不安はありませんでした。
このメンバーなら大丈夫という安心感があったし、なにより暗がりを歩くほうが怖かった。
なぜか、「ああ今日はビールお預けかぁ~」と頭によぎったのを覚えています(笑)

しかし、足を折り曲げ、ほとんど身動きの取れない9時間は辛かった・・・。
思い返せば、前日の駐車場でのゴロ寝がめちゃくちゃ快適に感じるなぁ。
おまけに、止んでた雨も日が変わる頃には再び降り出し、さらに過酷な状況に。
幸いなことに、比較的風は弱く、そこまで気温の低い時期じゃなかったのは良かったけど。

何度かウツラウツラとしたものの、ほとんど寝られず、何度も時計をみては時間を過ごします。
4:30、ヤスが奇跡的に持ってきていたガスストーブでお湯を沸かし、あったかいカフェオレを頂きます。
もうしばらくガマンすれば明るくなる!
同じツェルトに包まっているKojiさんといろんな雑談をしながらその時を待ちました。

5:30を回り、ようやく行動できそうな明るさになりました。
雨は降っていますが、ラッキーなことにガスは抜け、視界は良好。
準備を整え、再びM田さんが突破を試みます。
明るくなったとはいえ、濡れた岩場はかなり難しそう。
残置の支点もあまりなく、以前よりかなり崩壊が進んでいるようで苦労しています。
全員、祈るような気持ちでM田さんの登りを見守ります。
上部で姿が見えなくなってからもルート取りに苦労しているようですが、やがてビレイ解除のコール!
思わず拍手です!
ここではロープをフィックスし、プルージックで登ります。
正直、フィックスロープを使って登っても、岩が不安定でかなり難しい。これホントにⅢ級程度?
岩を落とさず登ることが不可能なくらいなので、下で待っているのも危険です。
ビュンビュンとコブシ大の岩だったり、カランコロンとエイトカンだったりが落ちてきます(笑)
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とりあえず心配していた難所は越えました。
その後も濡れているとちょっと怖い尾根を辿り、広大な笹の海を泳ぎ(トップ写真)、一般登山道にでました。
このころには、ガスも出てきて少し荒れてきましたが、あとは登山道を歩いて下山するだけ。
途中、ガスの切れ間から登って来た岩稜がうっすら見えました。
よくこんなところ登れたなと思うと同時に、初登した人には畏怖の念を抱かざるをえません。

一応、トマ・オキの両耳のピークを踏み、肩ノ小屋で一服。
小屋でビバークの話をすると、ありがたいことに暖かいお茶をごちそうしてくれました。

西黒尾根で下山予定でしたが、雨で濡れていると滑りやすいし、さすがに疲れたのでロープウェイで下山することに。
最後の方は、シャリバテでふらふらでした・・・。
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初めての谷川岳は、想像以上に厳しかった。
正直、一ノ倉沢の入門ルートといわれているし、意外と余裕でしょと軽い気持ちでいたのですが。
脆い岩にプアな支点、気象条件の変化に時間の制限などなど・・・。
これが「本チャン」ってやつだ!なめんなよ!と一蹴された気分です。
スポートクライミングとは共通点はあるけど、やはり別物。
もちろんどっちが上ってことではなくてね。

今回の山行では、初めてのビバークを含め、いろんなことが勉強になりました。
間違いなく一回り大きく成長したと思います。
文字通り命がけでロープを伸ばしてくれたM田さんはもちろんのこと、みんなの気持ちが一つになり、
協力しあったからこそ無事下山できたんだと思います。
本当に貴重な経験を積ませてもらってありがとうございます。

家に帰りつき、ビールを飲んで祝杯をあげ、ふかふかの布団の上で娘の寝顔を見ていたら、深い眠りに落ちていました。
今の世の中、あえて辛い思いをして山に登るってことの価値はこういうことなのかもしれません。
だって、こんな何気ない日常が幸せなんだって感じることができるんですよ!
by daisuke_youmei | 2012-09-26 12:27 | クライミング *
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