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やり残した宿題を。 八ヶ岳・阿弥陀岳北稜
2011年 12月 27日 *
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ようやくまとまった雪が降りましたね~。
そんな荒天の日本海側を離れ、今年の宿題を片付けるべく八ヶ岳に行ってきました。

12月の初め、冬季バリエーションルート(注1)のデビューを予定していました。
kojiさんみれさんの所にアップされている、M田さん企画の「赤岳西壁主稜」です。
初めての経験、ドキドキしながらも気合を入れて挑むつもりが、出発前日に家庭の事情により断念。
また次の機会に・・・と思いつつも、なんだかスキーモードにすんなり切り替われない自分がいました。

というわけで、kojiさんに「12月24日、どこか登りませんか?」と声をかけてみると・・・。
「阿弥陀岳北稜なんてどう?」との返事。
このルートも八ヶ岳の冬季バリエーションの一つで、入門に最適なルート。
この言葉で再び気合を入れなおし、準備を整えました。

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いよいよ当日。
真っ暗の美濃戸から、ヘッドランプをつけて南沢を登ります。
行者小屋に到着する頃、ようやく空が白んできました。
ここでショッキングな出来事が。
デジカメのSDカードを入れ忘れて来たのです。
という訳で、今回の写真は内蔵メモリーに何とか収めた最小サイズのものです・・・。
残念ですが、致命的な忘れ物で無くて良かった。

行者小屋にてアイゼンやハーネス、ヘルメットを装着し、手にはピッケルを持ちます。
さて、いよいよここから本番です!
入門ルートとはいえ、そこはやはりバリエーションルート。
地図からルートを読んで登らないといけません。
今回は行者小屋のすぐそばから尾根に取り付きました。
トレースはありませんでしたが、その尾根をたどれば核心の岩稜部にたどり着くはず。
ヤブをかき分けながら急斜面を登ります。
ジャンクションピークの手前で稜線上に乗り上げました。ようやく視界が開けます。
正面には今から向かう阿弥陀岳が、視線を左に向けると八ヶ岳の主峰「赤岳」が聳えています。
日本海側の荒天予報がウソのように、雲ひとつ無い青空。
風もほとんど無く、すばらしい登山日和です。
しかし、このクリスマス寒気の影響で午後からは下り坂の予報。
あまりのんびりはできません。
そうこうしている間に、阿弥陀岳~赤岳の間にある「中岳」から太陽が顔を見せました。
やり残した宿題を。 八ヶ岳・阿弥陀岳北稜_c0087773_12582522.jpg
雪が少なくて歩きにくい尾根をたどり、徐々に岩と雪のミックス帯になってくると「第一岩稜」到着です。
ここでロープを出し、ハーネスに結びあって、アンザイレン(注2)。
私たちのほかに、違う尾根から登ってきた2パーティが「阿弥陀岳北稜」に取り付いている模様です。
この「第一岩稜」、条件次第ではスタカット(注3)で登るようですが、今回私たちはコンテ(注4)で通過。
ちょっとしたテラス状の場所に出て、いよいよ核心の「第二岩稜」が始ります。
今回は雪が少なく、かなり岩が露出しています。
トップの写真はここでのkojiさん。

kojiさんがリードで登攀開始。
スルスルと順調にロープをのばしてゆきます。
やがて「ビレイ解除!」のコール。風が無いのでコールの聞き取りも問題無し。
いよいよ私がフォローで登攀開始。
アイゼンでの岩稜登攀の経験はほとんどありませんが、この前の黒岩での練習で多少コツを掴みました。
基本的には、無雪期のクライミング技術を踏まえたものだと感じています。
岩の間の凍結した草付きにもピッケルがガッチリ刺さり、豊富なホールドと相まって気持ちよく登れました。
とはいっても、それはフォローでの話。
中間支点が少ないので、リードだと精神グレードが上がりそう。
ピナクル(注5)や露出した潅木で支点を取ってある部分が多かったです。

2ピッチ目もkojiさんリード。
ビレイ点からはすぐに見えなくなりましたが、ロープの延び具合から特に問題なく登っている様子。
そして私の番。
順調に岩稜帯を過ぎると、この「阿弥陀岳北稜」のフィナーレ、ナイフリッジ(注6)が現れました。
写真で見るとすごく怖そうなんですが、実際はロープのおかげですんなり渡れました。
この北稜の登攀要素のある部分は、今回コンテで登った「第一岩稜」を入れても3ピッチ。
ここら辺からも入門向けのルートということなのでしょう。
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あとは、頂上までコンテで歩いて「阿弥陀岳(2805m)」到着!!
kojiさんとガッチリ握手です。
頂上からは360度のすばらしい展望。富士山もばっちり見えました。

さて、この景色に浸りたいところですが、岩稜帯での先行パーティの待ちがあり、少し予定が押しています。
風も少し出てきて、赤岳上部には少し雲がかかりだしました。
午後からの下り坂の兆しが見え出したようです。
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実は、今回の山行、ここから下って終わりではありません。
通常なら、中岳沢か文三郎道を使って行者小屋に下ります。
しかし今回の計画は、さらに赤岳に縦走し、地蔵尾根を使って下山します。
さらに赤岳鉱泉を経由し北沢を使って美濃戸に戻るという、まさに「ぐるっと南八ヶ岳」。
とてもkojiさんらしい(笑)計画なのです。
もちろん、天候・体力しだいでは途中でエスケープする計画です。

さて、ここからは一般道とはいえ、急峻な冬季の南八ヶ岳。油断できません。
まず阿弥陀岳から中岳のコルまでは一気に急降下する急斜面。
アイゼンとピッケルをしっかり効かせ、慎重に下ります。

中岳を登り返し、そしてまた下り。
コルから見上げると、赤岳に続くジグザグの道が。
ちょっと疲れてきました。
文三郎道との分岐点で、ちょっとエスケープしたくなりましたが・・・・。
行動食を補給し暖かい白湯を飲んだらやっぱりがんばろう!って気分に。
ちょっとづつ歩を進め、赤岳直下の岩場も慎重にクリア。
ようやく八ヶ岳の主峰「赤岳(2899m)」の頂に到着しました!
このころにはすっかり雲に覆われ、風もかなり出てきました。
赤岳頂上小屋の影で一息いれ、とりあえず赤岳展望荘に向かいます。
山頂から少し下ったところにある赤岳展望荘は年末営業中。
中に入って500円で飲み放題のコーヒーをいただきました。
砂糖とクリームをたっぷり入れて2杯。生き返ります!

あとは、地蔵尾根を下り、赤岳鉱泉でアイスクライミングをちょっと見学。
南沢より雪の多い北沢を下って美濃戸の駐車場に無事到着。

下の写真は中岳から見た阿弥陀岳。
登ってきた北稜が良くわかります。
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初めて経験した冬季バリエーションルートの「阿弥陀岳北稜」。
今までバリエーションルートといえば、登攀要素ばかりに目がいきがちでした。
もちろん登攀部分が全行程の核心部。
当然それ無しには語れないのですが、しかしそれだけではなかった・・・。
ただでさえ重い雪山装備に加え、登攀ギアが必要になるので、日帰りでも相当な重荷を背負います。
そしてアプローチではルートを探り、下山は一般道とはいえ気を抜けない状況が続きます。
それらを含めての、朝暗いうちからの10時間以上の行程でした。
入門向けのルートとはいえ、やはりなかなかに厳しいです。
でもその甲斐あってか、やり遂げた達成感はものすごいものがありました!

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私の冬シーズンは、福井の山をスキーで気持ちよく滑ることを一番の目的としています。
その目的に、八ヶ岳のバリエーションルートを登ることはあまり関係ないかもしれません。
しかし、私はゲレンデ上がりの山スキーヤー。
登山から入った山スキーヤーに対して、登山経験の上できっとコンプレックスがあるんだと思います。
その経験の差を少しでも埋めるためにも、ある程度の登山経験は積んでいきたいのです。
今後も冬シーズンに数回は、スキーじゃない登山をしていきたいですね。
って、もちろん自分で楽しんで登っているんですよ(笑)

まあ、これでようやく宿題が片付きました。
これからはスキーに集中できそうです。
とりあえずは、30日午前中だけ和泉に行く予定。楽しみ~♪


(注1)バリエーションルート:登山で、一般のルートとは違う、より困難な登路。
(注2)アンザイレン:二人以上が相互安全確保のためにロープを結び合うこと。
(注3)スタカット:一人だけが移動し、もう一人は止まってロープで確保している状態。
(注4)コンテ:コンティニュアス。アンザイレンしながら同時に行動すること。
(注5)ピナクル:尖った岩の突起。小岩峰。スリングをかけて支点になる。
(注6)ナイフリッジ:やせたナイフの刃のような稜線。ナイフエッジ。
by daisuke_youmei | 2011-12-27 12:30 | クライミング *
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